「離婚して!」その固い決意を崩し、回避するには

配偶者から突然離婚したいと言われ、離婚したくないので拒否しました。夫婦で話し合ったけれども、聞く耳を持ちません。一方的に離婚の手続きが進められるのではないかとの懸念が強くなります。このように、離婚の意思が固い相手を思いとどまらせるためには

まず、

  • 離婚への動きを止めること
  • 時間を稼ぐこと
が大事です。

離婚の決意が固い妻や夫の行動は?

この行動が見えたら意思は固い

相手が以下のような行動に出た場合、離婚の意思が固いと思われます。

  1. すでに弁護士を立てている
  2. 別居を強く希望している、または家を出ていった
  3. 離婚調停を申し立ててきた

「離婚してほしい」と切り出す妻や夫には、大きく分けて2通りのタイプがあります。普段から「離婚」の二文字を容易に口に出すタイプは、決意や覚悟が固いわけでもない場合が多いと考えられます。これに対し、普段はあまり感情を表に出さないのに、ある日突然、離婚届を手にハンコを迫るタイプは、相当の覚悟を決めている可能性が高いと言えます。

普段から離婚だ離婚だと騒ぐ人

普段から「離婚だ」と騒ぐタイプの人は、自分の感情をコントロールする能力が高いとは言えません。「離婚」を口にすることの言葉の重みを全く理解していないと言ってもいいでしょう。

こういう妻(夫)は、頭に血が上ると、理性よりも感情が勝ってしまい、相手に及ぼす影響をほとんど考慮せずに、「離婚」を突き付けます。それによって、相手がひるんで謝ったり、意見を自分の都合のいいように変えたりすることを期待するのです。

こうしたタイプに対しては、時間を置いて相手が頭を冷やすのを待つだけで充分です。または、実は最初から「離婚」をするつもりは毛頭なく、自分の思いやわがままを通すために言っているケースもあります。

気持ちを内に秘めるタイプの人

これとは反対に、普段は不平不満をほとんど言わず、怒りを胸の内に秘めているタイプの人間が「離婚してほしい」という言葉を発した時は、もうすでに離婚の覚悟を決めてしまっている可能性が高い。

相手が何を言おうとも、気持ちが変わることはありません。離婚届にハンコを押すのをじっと待つだけです。こうした相手に対し、離婚をしたい気持ちをとどまらせたり、翻させるのは相当難しいと言わざるを得ません。

まずは相手の気持ちを考えること

相手がどうして、そのような気持ちになったのかを理解したうえで、自分に非があるならば、それを改めることを訴えていくしかありません。もしくは、離婚をすることによって、相手に大きなダメージ与える手段があるならば、駆け引きとして、それを持ち出すのも一つの方法です。

離婚届へのサインは最後の最後までしない

配偶者が突然離婚に応じるよう請求してきて、思いとどまるように話し合いをしようとしても応じなかったり、話し合っても聞く耳を持たないような場合は、離婚の意志が固いか、離婚を急ぐ理由があると想定されます。

相手が離婚を急いでいる場合は、とにかく離婚届を書くように要求してくることが予想されます。相手から自分の署名入りの離婚届を渡され、そこに自分の署名も書いてしまうと、離婚届が有効になってしまいます。

自分の署名入りの離婚届が相手の手に渡ってしまうと、相手はいつでも、その離婚届を役所に提出し、離婚を成立させることが可能になります。離婚届への署名は最後の最後まで行うべきではありません。

離婚届の不受理届けは、一方的に出された離婚届を阻止する

不受理届け

離婚届には夫婦が署名・捺印し、求められている記載事項を記入する必要があります。それらが正確に記入してあれば、役所に離婚届が受理されて離婚が成立します。役所は形式的に離婚届をチェックすることしかできません。夫婦の双方に離婚する意思があるかどうかや、婚姻届が偽造されたものかどうかについては判断できないのです。

相手からの離婚請求を認めていないし、離婚届に署名・押印をしていなくても、相手がこちらの署名・押印を偽造し、役所に離婚届を提出した場合、役所は受理し、離婚が成立してしまう恐れがあるのです。

離婚したいと申し出た相手が、離婚を偽造し、勝手に役所に提出してしまうのを阻止する方法は、役所に「離婚届不受理申出」を提出しておくことです。そうすれば、本人が離婚届を提出する場合を除き、離婚届が受理されることはありません。

別居は離婚に向けたスタートライン。回避したいのなら引き留める努力を

配偶者が離婚を請求してきたとき、離婚する意思がないことを告げ、離婚を拒否した場合、相手は次のアクションとして、別居を始める可能性があります。離婚を告げられ、それを拒否した手前、相手と顔を合わせるのも気まずいので、思わず別居生活を受け入れてしまいがちですが、そうなると離婚へのムードが一気に高まってしまいます。

離れて暮らしていると、この後に離婚したとしても、生活状況は今とそれほど変わらない、という思いが互いに強くなっていきます。別々に暮らしたほうが、ストレスを感じず、気楽になってしまうと、もう一度、元の状況に戻ることが億劫になってしまう可能性もあります。

それは夫婦間の問題だけではありません。法的にも、別居が長い間継続してしまうと、離婚原因として認められる可能性も高くなってしまいます。別居期間が長くなればなるほど、元に戻るエネルギーも大きくなります。離婚を受け入れたくないのなら、相手が家を出て行く姿勢を示したときは、何とか引き留める努力をすべきでしょう。

相手から家出を強要された場合も、親権の死守を

別居

相手が家を出るのではなく、相手に追い出されてしまい、別居を余儀なくされる可能性もあります。相手に家を出るように言われたからといって、それに従う必要はありません。家庭内別居の状態になっても、家を出るのは避けるべきです。

しかし、暴力や脅迫を伴う家出の強要があった場合は、いったんシェルターのような施設に身を寄せることも考えなければなりません。身の安全が一番大事だからです。裁判になったときのために、暴力や脅迫の証拠は集めておくべきでしょう。

家出を余儀なくされた場合、子どもの親権を死守するために、子どもを連れて出ることをためらってはいけません。

相手が家を出るのを引き留めることができなかった場合や、相手から家出を強要され、別居を余儀なくされた場合は、弁護士など第三者に依頼し、相手側との連絡役になってもらう方法もあります。そうすれば、離婚をしたくないという意思が周囲に伝わり、裁判になっても有利に働く可能性も期待できます。弁護士を通じ、粘り強く別居を解消するように呼び掛ける努力を続けることが必要です。

離婚調停を申し立てられた場合の対処

配偶者が何としても離婚をしたいと考えているなら、家庭裁判所に離婚調停を申し立てる可能性があります。もし、相手が離婚調停を申し立て、離婚調停の期日が決まったら、家庭裁判所から調停の呼び出し状が送られます。

調停では、調停を申し立てた側を「申立人」と呼び、申し立てられた側を「相手方」と呼ばれます。離婚調停を申し立てられた側にとっては、何の予告も無しに家庭裁判所から文書が届きます。相手から離婚請求されている場合は、呼び出し状が届く想定で心の準備はしておくべきです。

離婚調停を申し立てられ、相手方になったときは、家庭裁判所から離婚調停の呼出状が届きますが、欠席することは避けるべきです。必ず裁判所に出頭することが大切です。呼び出しを無視していると、話し合うことができません。

無視できない離婚調停の呼出状。裁判で認められたら回避は不可能

話し合いができないと、離婚調停は不成立になって終了してしまいます。離婚調停が不成立だったことを受けて、裁判官がすぐさま離婚を認めるか認めないかの判断をすることはありませんが、それで一件落着というわけにはいきません。調停の不成立を受けて、申立人は、ただちに離婚裁判を起こすことができるようになるからです。

この裁判は絶対に負けられません。裁判所で離婚が認められてしまったら、離婚を回避することはできません。相手が離婚を認める判決内容を記した判決書を携えて、離婚届を役所に提出すれば、離婚が成立してしまいます。

一方、裁判所が離婚を認めなかった場合は、離婚を回避することができます。だからといって相手の気持ちが戻ってくるわけではありませんが、時間稼ぎはできます。夫婦関係の修復に取り組んだり、離婚に向けて、経済基盤を整える努力ができます。

同じ訴訟を繰り返しても離婚判決は出ないので、当面離婚されるおそれがなくなります。ただ、別居状態の場合、裁判で離婚が棄却されても相手が戻ってくるわけではないので、そのまま実態のない夫婦関係が延々と継続してしまう可能性はあります。不成立になると、相手は離婚訴訟を起こしてきます。

離婚訴訟では、自分の希望をあれこれ主張するので、大変に嫌な思いをします。また、相手の主張をつぶすためには、こちらも離婚問題に強い弁護士に対応を依頼することが必須となります。

まとめ

配偶者から突然、離婚を言い渡されたら、パニックにならずに、まずは修復へ向けた努力をすべきです。夫婦で話し合いの機会を持ち、自分に悪いところがあれば、改善することを約束し、実際にその努力を継続します。

しかし、相手の離婚の意志が固い場合は、話し合いに応じなかったり、話し合いのテーブルに着いたとしても、関係を修復する気持ちがほとんどない場合も考えられます。こうした場合は、慌てずに、まず離婚を阻止する手立てを打たなければなりません。

こうした手立ては多岐にわたるし、本人では気が付きにくい面もあります。相手の意志が固いとわかった時点で、弁護士など第三者に相談することは効果的です。すくなくとも、弁護士の無料相談などを利用し、対策についてアドバイスを受けられると心強いです。

*この記事は2018年9月時点の情報に基づいて作成しています。