ドラマやアニメなどで、こんなシチュエーションを目にしたことがあります。別れることを決めた夫婦が、どちらがどちらを引き取るかを話し合うシーン。お父さんについて行く?お母さんについて行く?などと話し合う子供の姿。
両親の離婚により、子供に大変なストレスを与えることは避けられませんが、別れた後に子供が少しでも平穏に暮らせるように配慮しなくてはいけません。複数の子供がいる夫婦が離婚をする場合、子供の引き取り方にルールなどがあるのでしょうか?
子どもの数に対し、親権も1人ずつ
2人以上の子どもがいて離婚をする場合、子供達はバラバラにせず一緒にして、お父さんかお母さんのどちらかが親権を持って育てるというのが基本です。子供たちが離れ離れで暮らすことは望ましくないとされているからです。
けれどそうではなく、別々にするケースもあるようです。こうしたケースでも、子どもが平穏に生活が出来て、心も体も穏やかに成長できる環境。これを重要視するという基本原則は変わりません。
子どもが2人の場合は、それぞれ2人分の親権があります。つまり、子どもの数だけ親権があるということです。親権は未成年の子供には必ずつけなくてはいけません。
たとえば子供が3人いて、それぞれの年齢が20歳、15歳、12歳だったとします。この場合、15歳、12歳の子供の親権を決めなくてはいけないということになります。
親権を決める時、親の心身の健康状態も十分に考慮しなければなりません。子どもの年齢によっては本人の意思も尊重することもあります。また、子どもに虐待をするような親には、親権を与えないようにすることも考えなければなりません。
裁判所は、子どもの健全な成長のために適した判断を行うという原則を重視します。子どもが複数いる場合は、それぞれが離れ離れにならないように配慮します。しかし、親権を分けたほうが、子どものためだと判断された場合は、父と母に親権を分けるケースもあります。
兄弟の親権を別々にすることが適当なケースも
「兄弟姉妹が一緒に暮らすべき」という考え方はあくまでも基本原則であり、例外もあります。「子どもの健全な育成」のために適当だと考えられる場合は、子供を別々に引き取ることも可能です。
夫婦の間の話し合いで、別々にすることが適当だという結論を出す場合もありますし、裁判所がそのように判断する場合もありますね。
もちろん兄弟姉妹は一緒に暮らした方がいいけれど、それぞれの家庭で様々な事情もあるでしょう。大切なのは、1人1人の子供の気持ちや、生活環境を考えて最善の選択をするということです。
乳幼児、15歳以上…子どもの年齢に応じた判断
15歳以上であれば、父か母かどちらの親と一緒に暮らしたいのか、子ども自身の気持ちを確認することも重要です。子供のための親権であるならば、子どもの意向に沿うことは適当と言えるでしょう。
その一方で、複数いる子どもが乳幼児の場合は、母親が子育てをしたほうが適当だと考えられる可能性もあります。これも、あくまでも原則であって、母親の状況などを考慮し、子どもの福祉に沿った判断が必要です。
子供にとって、どうすることがベストなのかをしっかりと考えること。(ベストにはならずベターな選択になってしまうかもしれません。)いずれにせよ、子どもの年齢や父・母の状態、生活のあり方など、家族のカタチによってケースバイケースであり、これが正解というものはないのかもしれません。
高校生の長女は、父親と暮らしたいという希望がある。小学生の長男は姉と離れるのは嫌だと思っている。
こんな場合はどう思いますか?小学生の親権は母親が得ることが多いです。姉と弟が別々に暮らすのは良くないです。だからといってその原則に基づいて、母親が2人の子供を引き取り、暮らすことになったら・・・。高校生の姉の気持ちを考えるとかわいそうですね。
母親は体の調子が悪く仕事も持っていない。
こんな場合はどうでしょう。母親に生活力がない場合は、父親が育てた方が良いでしょうか?母親に生活力がなくても父親が養育費を払うのは義務です。しかし体の調子が悪くて子供の世話ができないとなれば、祖父母などの協力を得ていないと、子育ては難しいかもしれないですね。
夫婦が再婚で、連れ子がいるケース
例えば、夫婦のどちらかが再婚であったり、夫婦双方が再婚である場合です。夫婦のどちらかに連れ子がいる場合、または夫婦の双方に連れ子がいる場合を考えます。こうした夫婦が離婚を決意した場合、もともとの親が、それぞれの連れ子の親権を持つ可能性は大きいと考えられるでしょう。
この場合の夫婦に、子どもができた場合はどうでしょうか。その時は、その子どもの親権をどちらが持ったほうが、「子どもの健全な育成」のためになるかを考えて、判断されることになります。
兄弟が別々に引き取られた場合の養育費
養育費の額の決め方は、別々に育てる場合でも、一緒に育てる場合でも同じです。夫婦の話し合いで決まらない場合や、話し合いができない場合は、家庭裁判所の調停において金額や支払方法を話し合います。
調停でも決着がつかないときは、審判や訴訟の中で裁判所の判断を仰ぎます。金額については、「養育費算定表」を使って、金額を計算することが多いようです。
養育費算出の例
年収600万円の会社員の夫と、年収260万円のパート勤務の妻が離婚します。年収は手取りではなく、税込みの総支給額です。夫は16歳の長男を引き取り、妻は10歳の二男を引き取ります。この場合、妻が夫に対して、請求できる養育費を計算してみましょう。
年収 | 引き取る子供 | ||
---|---|---|---|
夫 | 会社員 | 600万円 | 16歳の長男 |
妻 | パート勤務 | 260万円 | 10歳の二男 |
1 裁判所がウェブサイトで公開している養育費算定表を見る
「子2人表(第1子15歳以上、第2子0~14歳)」をページ見ます。養務者である夫の年収(給与)600万円、妻の年収260万円が交差するレンジをみると、養育費は月8~10万円の枠の上部になるので、10万円とします。
2 妻が引き取る子供の生活費の割合を算出する
大人の生活費を100とした場合の指数でみると、14歳以下の子供は55、15歳以上の子供は90となります。
- 妻が引き取る二男は10歳なので、生活費の指数は62です。
- 夫が引き取る長男は16歳なので、生活費の指数は85です。
- 全ての子供(2人)の生活費指数の合計は62+85=147です。
つまり、62÷147×100,000円=42,176円となります。
基本的な考え方としては、子ども全体にどれだけ費用がかかるかを計算し、引き取った子どもにかかる費用が少ないほうから、かかる費用が多いほうに対し、養育費を支払うことになるでしょう。
養育費の決め方はこのほかにもありますので、実際にどのように決めるかを双方で合意します。実際には、家庭裁判所の調停の場や、弁護士に依頼した場合は、

兄弟を別々にし、育て役を分けるケース
具体的には、親権者を父親に決めたけれども、父親が仕事のために家を空けなければならないことが多いため、子どもを監護することができない場合などは、育て役を母親に指定するケースもあるようです。
親権と育て役を分けるケースは、子どもが複数の場合でも、子どもが1人の場合でも考えられます。例外を採用するかどうかは、家族のカタチによってケースバイケースです。しかし、親権者と育て役を分けるケースでは、親のそれぞれの気持ちというより、そうしたほうが「子どもの健全な成長」のためになるとの判断が重要視されます。
これらは、いずれも親の権利ですが、社会的に未熟な子どもを守り、子どもが精神的・肉体的に健全な成長をサポートするという義務でもあります。
まとめ
私も離婚をし、子供2人を引き取って育ててきましたが、子供たちは協力しお互い支え合って成長してくれました。両親の離婚で傷ついた心を理解し合える、大切な存在だったと思います。
兄弟姉妹は一緒に育てた方が良い。子供のためにはそれが一番良いということが頭ではわかっていても、色々な事情で別々にせざるを得ないケースもあるでしょう。
親権と育て役を分けたりするケースもありますが、子供にとって書類上の権利より、毎日の暮らしがどうなるか。そちらの方が大切なのではないでしょうか。子供を手放すのが辛いという感情の前に、子供の感情や幸せを考えて決定して欲しい。そんな風に思います。