共働きなのにも関わらず、家事や育児については奥さんばかりの担当で、夫は協力してくれないという話しはよく聞きます。
何らかの理由で1人で仕事、家事、育児の全てをこなさなければならない状態を指して、ワンオペ(ワンオペレーション)という言葉があります。家事・育児・仕事の負担が重くのしかかり、離婚したいと思う女性も多いようですが、解決策はあるのでしょうか?
平等な家事分担の決め方を見直す
妻が仕事復帰する時に分担の見直しを
最近は、女性の社会進出を後押しする風潮が強まってきて、結婚、出産を機に退職する女性は以前より減っています。また、いったん退職したとしても、子どもの育児が一服した段階で、社会復帰をするケースも増えています。
人手不足感が強まってくると、育児のためにいったん退職した女性を再雇用する企業もあります。また、そうでなくても、フリーランスと言う形で仕事を請け負い、子育てをしながら、自宅で仕事復帰を果たす女性もいるようです。
そうなると、夫婦が両方とも仕事を持つ「共働き」のカタチになります。こうなると、これまで妻が一手に引き受けてきた家事や育児を夫婦でどう分担するかが最大の関心事になります。
妻が育児に専念している間、夫が少し手伝ってくれていたとしても、妻の仕事復帰でその分担の割合をどう変更するかが問題になってきます。
仕事復帰を決めた時点で話し合いをしていない場合は、夫との話し合いの時間を作ることで、問題が解決する可能性もあります。
家事分担表などで、不公平を解消
家事のワンオペの原因は、夫が妻の負担に気付いていないケースもあります。その場合は、実際に負担している家事の種類や時間などを書き出すことにより、夫の協力を得ることができるかもしれません。
分担表を作るというのも解決策の一つです。それでも負担が残るようならば、家事代行に頼んだり、クリーニングに出したりといった、「家事を減らす」という方法も考えると良いでしょう。
家事を公平に分担するなら、収入よりも労働時間を考慮してもらう
「共働き」といっても、夫婦で労働時間や収入が異なる場合が少なくありません。夫婦で家事・育児を折半で分担することは現実的ではないという考え方は根強くあります。
よくありがちなのが、妻がパートなどで家計を支えている場合。夫が妻の労働を軽く見ている場合、家事は妻がやるべきと思ってしまうかもしれません。その場合は収入よりも家事や育児を含めた労働時間を考慮してもらいましょう。
妻のワンオペ育児は、いつ限界が来ても不思議でない
単純に労働時間で割合を決めることができれば、すっきりする夫婦もいるかもしれません。しかし、夫の性格や度量の大きさ、または家事や育児が得意かどうかによって、適正な負担割合を決めるのが妥当と考えられます。
こうしたことも多いですので、家事も育児もぜんぶを半分づつでというのは現実的ではないことも多いでしょう。夫婦お互いが納得して分担の形を決めているのなら何の問題もありません。
しかし、例えば夫婦ともにフルタイムで働いているのにもかかわらず、夫は家事にも育児にも参加しないという場合は、妻は完全にワンオペ状態に陥ってしまいます。
仕事、家事、育児を一手に引き受けるのは体力的にも精神的にも極めて厳しいと言えます。このような場合、妻が結婚生活に意義を見い出せず、「離婚したい」と思っても不思議ではありません。
仕事と家事の両立だけでも大変なのに、そこに育児が加わった場合、とても1人では抱えきれません。無理をして体を壊したり、鬱などの精神的な病気になってしまう可能性もあり、とても危険です。
「夫が家事をしない」は離婚原因になるのか
妻が仕事、家事、育児のワンオペ状態が続いたり、夫が少しは手伝ってくれるとしても、家事・育児の負担が重すぎて、体力的にも精神的にも限界に追い込まれた場合、「離婚したい」と夫に申し入れたとします。
夫が、妻との話し合いの中で、妻からの離婚の申し入れを受け入れた場合、「家事負担の偏り」が離婚原因であるかどうかには関係なく、離婚が成立します。しかし、夫が話し合いによる離婚を拒否した場合は、離婚原因がなければ、家庭裁判所は離婚を認めることができません。
それでは、「共働きの夫が家事も育児もしない」という事態が離婚原因になるのでしょうか。民法上の離婚原因は以下のとおりです。
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
- 配偶者に不倫や浮気などの不貞行為があった場合
- 配偶者から悪意の遺棄(理由のない別居や理由おなく働かないなど)をされた場合
- 配偶者の静止が3年以上不明な場合
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある場合
上の4つの項目については、共働きの夫婦の離婚理由としては、当てはまるケースが少ないように思えます。このため、妻が家事、育児の重い負担を背負っていることが、「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたることを認めてもらうことが重要になります。
別居をした場合、離婚に有利になるか
ワンオペの辛さに耐えきれず、話し合いによる離婚も拒否されてしまった場合、別居するという方法があります。別居の期間が長くなると、婚姻を継続しがたい重大な事由と認められ、離婚を実現させることができます。
別居に伴うリスク
しかし、この場合、夫側から「悪意の遺棄」との追及を受け、離婚の原因をつくった側とされてしまうリスクもあります。
また、別居した場合、実家の親や兄弟、知り合いなどに家事・育児を手伝ってもらえるのなら別ですが、そうでない場合は、夫と別にすんだからと言って、家事や育児の負担が楽になるわけではありません。
むしろ、別居に伴い、住宅費や光熱費、食費などの生活費が別々になるために家計に対する負担は重くなり、生活レベルは結婚しているときよりも落ちてしまう可能性も頭に入れておいたほうが良いでしょう。
精神的ストレスからの解放
それを覚悟のうえで、生活設計を組みなおし、別居に踏み切るのはアリと言えます。おそらく、家事や育児を自分だけに押し付けて、罪悪感を感じない夫に対し、一緒にいることがストレスになっている場合も少なくありません。
そうした場合は、多少、生活水準が落ちたとしても、ストレスから解放されるほうがメリットが大きい場合も考えられます。
夫はいないものとあきらめることができれば、夫が手伝わないことに対するイライラもなくなるはずです。精神的、身体的な健康状態を回復させたうえで、前向きに生活再建をするほうが健全とも考えられます。
家事・育児の負担が重かった証拠を残す
証拠の例
- 週末になると、全て丸投げ!夫の行き先を日記に記録
- 家事分担の話し合い。夫の一方的な押し付け発言を録音
- 妻の負担・夫の負担をそれぞれメモに書き出し、不平等を見える化しておく
家事や育児について、ワンオペ状態であった場合、または、家事・育児の負担が大きく偏っている場合は、その状況を示す証拠を残しておくことが重要になる場合があります。
それは、子どもがいる場合、どちらが親権者となるかについて争いが生じたときに、家事や育児を負担していることが親権の取得に有利に働く可能性があるからです。日記をつけたり、会話を録音するなどして記録しておきましょう。
親権争いなどの事態を想定し、状況証拠を
家事や育児を妻に押し付けていた夫だから、離婚となっても、子どもの監護を担う親権者になりたいと主張するケースは稀であると考えられます。
しかし、離婚をしたくない、子どもと離れたくない、という自分本位の考え方で、親権を主張する夫もいるかもしれません。
そのような場合に備えて、夫と家事分担について話あったときの会話を記録しておくなど、証拠を残しておくことは大事です。
家事や育児を避けてばかりいたことがわかる証拠があれば、親権を主張することも難しくなるし、離婚の条件事態も、妻側に有利に持っていける可能性も高いと言えます。
まとめ
家事、育児をしない夫と離婚したいと思ったら
- 「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたることを認めてもらうこと
- 別居は「悪意の遺棄」との追及をされてしまうリスクも
- 家事・育児の負担が大きく偏っている場合は、その状況を示す証拠を残す
働きながら、家事や育児を1人で負担することは大変な重労働です。精神的にも、肉体的にも追い込まれてしまうこともありえます。夫婦が共に働いているにもかかわらず、家事や育児を妻だけに押し付けて、平気でいられる夫に対し、愛情が冷めてしまうのも無理がありません。
しかし、夫が話し合いでの離婚を拒否した場合、家庭裁判所が離婚を認めるだけの理由になるかどうかは微妙なところです。
別居した場合、これまでと同じ生活水準を続けるのは難しく、家事や育児の負担が減るわけでもありません。そのあたりを十分に理解したうえで、それでも、離婚の決意が固いのであれば、弁護士に相談するなど、離婚へ向けての準備をしっかりと進めていくことが大切です。