夫や妻が不倫をし、離婚することになった場合、その原因を作ったのが第三者である配偶者の浮気相手や不倫相手であると考えることができます。そうした場合、浮気・不倫相手が、既婚者であることを知っていた場合は慰謝料を請求できます。
浮気相手・不倫相手に対し、慰謝料を請求する
夫や妻が、不倫をしたことが発覚した場合、必ず不倫相手から、慰謝料を得ることができるとは限りません。慰謝料が発生するかどうかのポイントは、不倫行為が「故意」であるかどうかです。
ただ、すでに配偶者から十分な慰謝料を受け取っている場合や、時効(損害と加害者を知った時点から3年以内)が過ぎてしまった場合は浮気相手・不倫相手に対し、慰謝料を請求することはできません。
浮気相手に慰謝料請求をする流れは?
浮気相手・不倫相手などの第三者に慰謝料を請求する時には、電話やメールで連絡を取り、当事者同士または弁護士などの代理人を通して話し合う方法があります。相手に請求する内容と日時の記録を残しておきたい場合は、事前に内容証明郵便を送ると効果的です。
当事者同士、または代理人を通しての話し合いがまとまらない場合は、調停を申し立てることもできますが、調停をスキップして裁判を起こすケースが一般的です。離婚に発展しなくても、浮気相手・不倫相手に慰謝料を求めることはできますが、離婚の場合ほど大きな金額になる可能性は低いと言えます。
裁判での慰謝料請求の手順
当事者同士、または代理人を通しての交渉で和解・示談ができなかった場合、裁判で慰謝料の請求に踏み切るケースがあります。その時は、どのような手順になるのでしょうか。細かい手続きは弁護士などの代理人に任せることはできますが、おおまかな流れを知っておくと心強いです。
相手が否定したら証拠を提出
まず、家庭裁判所に訴状を提出します。この訴訟の提起の際に提出する訴状には、慰謝料の金額と、慰謝料を請求する根拠となっている浮気・不倫の詳細を記載します。浮気相手・不倫相手が、不貞行為の事実を認めない場合には、証拠を提出し、裁判所に不貞行為の事実を認定してもらうことが重要です。
続いて、浮気相手・不倫相手による反論が行われます。こちらが提出した証拠について、不備を指摘し、証拠能力を否定したりします。それに対し、再反論の場が与えられ、証拠能力を肯定する意見を述べたり、証拠を補強する物証を示します。
裁判の途中で和解することも
ケースバイケースですが、慰謝料を請求する側(原告)と、浮気相手(被告)という当事者双方から、裁判所が直接意見を聞く当事者尋問が行われます。原告と被告の双方が裁判所に呼ばれ、その場で初顔合わせとなる可能性もあります。
この後も、裁判の手続が進みますが、裁判所から和解勧告を打診されるケースがあります。和解案が双方の間で合意できるものであれば、裁判の途中であっても「和解」が成立することもあります。最後まで和解しなかった場合は、裁判所の判決が出され、慰謝料の金額などが決まります。
慰謝料を請求する浮気相手の住所がわからない
さて、夫(妻)の不貞行為の事実を把握し、浮気相手・不倫相手に対し、慰謝料を請求する決意を固めました。しかし、訴状を出すためには、相手の名前や住所を知らなければなりません。しかし、浮気相手・不倫相手が知り合いでない場合は、訴える相手の素性が分からないケースは少なくありません。
弁護士に依頼する方法
浮気相手・不倫相手の素性を調べる方法として、「自分で調べる」「弁護士に相談する」「探偵事務所に依頼する」などが考えられます。弁護士や探偵事務所に依頼する方法が最も角度が高い情報を入手できる可能性が高いと言えます。
しかし、ここで難しい判断に迫られます。弁護士や探偵事務所に依頼するには費用がかかります。浮気相手・不倫相手に対する慰謝料の相場が、数十万円~300万円程度の幅であると考えると、あまり費用をかけすぎると、慰謝料を獲得しても残るお金は少なくなってしまいます。
最も、費用対効果が高い方法は、弁護士に相談することだとされています。弁護士に裁判を依頼すると、弁護士が代理人となって、裁判に関する様々な手続きを行うことができます。相手の名前や住所が分からない場合には、弁護士による「職務上請求」「弁護士会照会」という方法があります。職務上請求とは、弁護士が職務のために必要な場合に住民票や戸籍などを取り寄せることができる制度です。
探偵に依頼する方法
特定の人物の身元調査や行方不明となっている人物を探すなどのサービスを提供している探偵事務所や興信所に依頼する方法もあります。浮気や不倫などの調査を依頼すると、不貞関係を示す証拠や、不倫相手の名前や住所も調べてもらうことができます。
弁護士に依頼すると、弁護士経由で探偵を雇う方法もあります。ただし、これらの場合は、いずれも費用がかさむことが想定されます。とくに、探偵事務所に調査を依頼すると、調査に時間かかったり、なかなか調査が進まずに難航すると、費用が増えていく傾向があります。
探偵に依頼する際も、なるべく自分で情報や証拠を集めておくと、調査の期間が短くなり、費用を抑えることが期待できます。
自分で証拠集めや調査をする方法
不貞行為をしている配偶者と同居している場合、自分で調べるほうがさまざまな情報を入手できる可能性が高い場合があります。例えば、GPS機能の付いた追跡装置を配偶者の持ち物や乗用車などに装着し、行動パターンを把握することで、不倫相手の住所を割り出せる可能性があります。
SNSなどでやりとりをしている相手ならば、コメント欄や友達一覧、写真などから相手の居住地や行動範囲など、なんらかのヒントが得られるかもしれません。
ただ、ここで注意しなければならないのは、配偶者の浮気・不倫が発覚したとき、感情的になって不倫相手の自宅に怒鳴り込んだり、迷惑行為に及んだりすることは避けるべきです。
万一、人違いであったり、配偶者と関係があったとしても不貞行為がなかった場合に、損害賠償を追及される恐れもあります。相手に関する情報がある程度集まった時点で、弁護士や探偵などの専門家に相談するほうが無難です。
まとめ
- 既婚者だと知った上で不倫行為をしていたことが前提
- 相手の自宅または勤務先へ、事前に内容証明を送ると効果的
- 調停もしくは裁判へ。裁判の途中で和解することもある
- 相手の住所がわからない時は弁護士や探偵に。調査費用がかさみすぎないように注意
浮気・不倫などの不貞行為に関する慰謝料を支払う責任は、配偶者と浮気相手・不倫相手の両方にあります。つまり、慰謝料を請求する相手として、配偶者、浮気相手・不倫相手、その両方の3パターンがあります。しかし、慰謝料の額が300万円だった場合、両者に対し、300万円ずつ請求することはできません。
こうしたルールを踏まえ、どのように慰謝料を請求するのが適当かを考える必要があります。慰謝料を獲得した後、配偶者と離婚するのか、やり直すのかも、請求相手を決める重要な要素になります。