事実婚が離婚に!内縁解消の慰謝料や財産分与は?

事実婚とは、内縁と同じように、法律上の婚姻成立要件を満たさないカップルの関係のことを言います。内縁と違って、カップルが今の婚姻制度に対して疑問を抱くなどの理由で、自ら法律的に認められる結婚を選ばないことが特徴です。

また、もう少し幅を広げて、婚姻届を提出していないけれども、法的に認められた結婚の夫婦と同じような関係を指すこともあります。しかし、内縁や事実婚でカップルの関係が壊れた場合、法律的に認められた夫婦が離婚する場合と違ってきますので、注意が必要です。

事実婚と同棲の違いって?

同棲とは、カップルが共同生活を行っている状態を指します。一方で、互いに婚姻の意思がある場合、認知した子どもがいる場合、住民票が同一世帯である場合など、周囲から夫婦と同じように扱われているような場合を「事実婚」と言います。

簡単に言うと、婚姻届けを提出していないことを除いては、結婚している夫婦と同じような状態です。住民票を同一世帯にする場合は、続柄を「夫・妻(未届)」と記入するケースがありますが、戸籍上の配偶者が別にいる場合はこのような記入はできません。

また、婚姻届を役所に提出していなくても、結婚式を挙げることはできます。結婚式を挙げることで、周囲に対する認知を広めることができます。

事実婚、内縁の解消!財産分与はどうなる

財産分与

一般的に事実婚の場合は、相手がなくなった場合に法定相続人になれません。カップルの間に父親が認知した子どもがいれば子どもが法定相続人となり、子どもがいない場合は、被相続人の親や祖父母、兄弟姉妹が法定相続人となります。遺産相続をさせたい場合は、生前に遺言書を作っておく必要があります。

家庭裁判所では、内縁の夫婦は、法的に認められている夫婦に準じて、法律上で保護するという考え方です。つまり、内縁の関係を解消(法的な夫婦の場合の離婚に相当)するときは、内縁・事実婚として共同生活していた期間に形成した財産について、財産分与することができます。

財産分与の方法についても、法的に認められた夫婦の離婚の場合と同じで、どちらか一方に特殊な才能があるなどの特別な事情がある場合を除き、2分の1ずつ分けるのが基本です。

事実婚、内縁カップルが破綻する際の財産分与の対象

対象となる財産については、法律に従って結婚したカップルが離婚するさいの財産分与の考え方と同じです。内縁関係として共同生活をしていた期間中に夫婦で協力して形成された財産が、内縁解消時に清算する財産分与の対象になります。

どちらの名義であるかどうかに関わらず、共同で築いた財産は財産分与の対象です。相手の名義となっている預貯金でも、事実婚や内縁の期間中に増えた部分の財産については、財産分与の対象になり、相手に分割を求めることが可能です。

他方で、事実婚や内縁関係の共同生活に入る前から、どちらかが築いていた財産や、事実婚や内縁の期間中であっても、相続で増えた財産は、財産分与の対象外です。

不動産の財産分与の注意点

事実婚状態の破綻や内縁解消する際の財産分与の対象財産に、住宅などの不動産があるときは、将来に相続人となる親族との間に紛争が起こらないように、財産分与した内容を公正証書などで確認しておくことが必要です。

不動産の財産分与では、すみやかに不動産登記をしておきます。もし、早めの手続きを怠り、先延ばししていると、登記完了前に登記義務者が亡くなったときは、相続人を相手にして登記の請求をしなければなりません。

事実婚や内縁関係であっても、財産分与の考え方は法律に従って結婚した夫婦の場合と同じです。後でトラブルにならないように、合意した内容を書面に残すことが必要です。ちなみに、内縁関係を解消するための役所に対する届出手続はありません。

事実婚、内縁の解消!慰謝料はどうなる

事実婚や内縁の関係であっても、婚姻届を役所に提出していないことを除けば、法律上の夫婦と変わりがありません。つまり、事実婚や内縁のカップルは、法律上で保護を受ける関係です。どちから一方が、正当な理由もなく、事実婚や内縁の関係を解消すれば、他方の配偶者に対する権利の侵害になり、慰謝料の支払い義務が生じます。

事実婚の破綻や内縁解消となる原因が、どちらか一方が起こした異性関係である場合、その相手となる異性が内縁配偶者を持つ相手であることを知りながら性的関係を持ったときは、その相手の異性は他方の配偶者に対して慰謝料を支払う義務を負うことになります。

長い期間にわたり内縁にあった関係を一方的に解消した側に対し、慰謝料の支払いを命じた判例もあります。内縁関係は役所に婚姻届を提出していないので、2人の関係を公式に証明するもの乏しく、その期間についても証明することが難しいケースもあります。このため、男女が内縁関係にあったかどうかの事実をめぐり、当事者間で争いになることもあるようです。

事実婚の子供の親権はどちらか一方だけに

婚姻届を役所に提出し、結婚した夫婦は、子供が生まれると共同で親権を持ちます。これに対し、事実婚・内縁関係の場合は、どちらか一方が親権を持ちます。

事実婚・内縁関係では、子供が生まれた時点で、法的な父親が存在しない「非嫡出子」となります。そこで、子供が生まれた時点、または生まれる前の妊娠の段階で父親が認知しておくことになります。

こうした場合、通常は生まれた子供の母親に親権がありますが、協議によって父親を親権者とすることもできます。事実婚・内縁の場合は、法律婚と違い、結婚に伴い新たな戸籍が作られるわけではありません。
事実婚の子供の親権
そこで、子供が生まれると、子供を入籍させる戸籍が必要になりますが、母親が旧姓である親の戸籍に入っていると、親子3代での戸籍というのはできないため子供を入籍させられません。

MEMO
法律婚の場合 → 父親と母親が子供の共同親権を持つ
事実婚・内縁 → 母親か父親のどちらかが単独親権を持つ。
(父親が子どもを認知し、非嫡出子と戸籍に記載)

事実婚の子供の親権
出生届を出すと、子供は母親の戸籍に入ります。姓は母親の姓です。父親の姓を名乗らせる場合は、認知をした上で子供の氏の変更の許可申請を家庭裁判所に行います。

このように、事実婚・内縁のカップルの子供に関しては、親権がもっとも大きな障壁になります。こうした煩雑さを避けるために、子供が生まれたことをきっかけに、婚姻届を役所に提出する夫婦もいるといいます。

事実婚・内縁を解消した時の親権、養育費は

事実婚・内縁関係のカップルの間に生まれた子供であっても、子供には養育費を受け取る権利があります。夫が子供を認知しているのが前提ですが、事実婚や内縁の関係が解消したときに子どもの養育費を請求します。

一方で、子供は「非嫡出子」なので親権は母親にあります。認知を届出しただけでは、親権は父親に移りません。夫が親権を持つ場合は、養子縁組を成立させる必要があります。

子供との面会交流については、法律婚で離婚する際と同様に、面会交流の具体的な方法、回数などについて取り決めた合意書を作成しておきます。

まとめ

内縁や事実婚解消の時に注意することは?

  • 共同で築いた財産は財産分与の対象。財産分与した内容は公正証書にしておく
  • 正当な理由のない関係解消で、慰謝料の支払い義務が生じるが、内縁関係の期間などを証明することが難しい場合がある
  • 事実婚の子供の親権はどちらか一方
  • 夫が子供を認知してれば、関係解消後に養育費を受け取る権利が発生する

事実婚・内縁の関係にあるカップルがその関係を解消する時、慰謝料を請求する権利や義務は同じように発生します。事実婚・内縁だからといって、正当な権利を我慢する必要はありません。

もし、相手側が関係解消に際し、「法律的な義務はない」と主張し、いい加減な対応を取る姿勢であるならば、弁護士などの専門家に依頼することを検討すべきです。

当事者だけで解決しようとするのではく、第三者を交えて交渉したほうが、法的な根拠のもとに適切な合意内容で関係解消することが期待できます。