悲痛!離婚、別居中の子供の連れ去り

離婚した夫婦や別居している夫婦の間で、子どもの連れ去りが深刻な社会問題となっています。離婚をめぐる交渉の中や、別居中、離婚後など、タイミングは様々。連れ去りを行うのは、親権を獲得するのが厳しくなった側の親、親権を取れなかった親がほとんどです。

  • 突然子どもを連れ去ってしまう
  • 国際離婚をした相手が子どもを本国に連れ去ってしまう
  • 面接拒否をされ子どもに会えない親が連れ去ってしまう。

離婚後や別居中に連れ去り

通常、夫婦が離婚する場合は、互いに話し合いの場を持って、財産分与や慰謝料などの離婚条件を決めることが多いようです。こうした場合は、お互いが合意すれば、役所に離婚届を提出することで離婚が成立します。

これに対し、離婚をしようとしている夫婦の間に、未成年の子どもがいる場合は、子供の親権者を決めなければ、離婚は成立しません。日本では、離婚後の「共同親権」が認められていないので、離婚するときには必ず親のどちらか一方が親権者になります。離婚届に必ず子どもの親権者を記入しなければなりません。

このため、夫婦の双方が子供の親権を主張した場合、どちらかだけが親権者になります。協議でまとまらない場合は、調停、裁判などを経てでも、法的に決着を付けます。結論が出る前に、連れ去り別居が起こるケースがあるようです。

また、離婚が決まった後でも、子供と面会した後、親権者に子どもを返さず、連れ去るケースもあるようです。

親権を取るための強引な子供の連れ去り

子供の連れ去り

日本では、子供の親権をとるための連れ去りもあるようです。日本では、小さい子どもに関し、母親が親権を取るケースが多いため、調停や裁判では母親に親権をとられてしまうと考えた父親が、家から子供を連れ出して、強引に子どもの親権をとろうとするケースもあるようです。

これまで、子供の親権を決めるときの考え方として、現状維持を重んじる場合がありました。子供が落ち着いて生活しているなら、その状況を変えることによる悪影響を懸念し、そのままにしたほうがいいという考え方です。

しかし、この原則を重視過ぎると、子供の連れ去った側の親に親権を認める流れになってしまいます。このため、最近は違法な連れ去り別居を行った場合には、親権を認めず子どもを帰すという考え方が強まっているようです。

離婚後の子供連れ去り。引き渡しに新しいルール

政府は2019年2月19日、離婚した夫婦間の子供を引き渡す際のルールを明記した民事執行法改正案を閣議決定しました。親権を失った親が、司法判断に従わず、子供を連れ去るなどのケースに歯止めをかけようという狙いです。2020年春までの施行を目指しています。

離婚後に子供を連れ去られた場合、裁判所の執行官が強制的な引き渡しを行います。 しかし、現行法では、親権を失った親が連れ去った子を引き離す強制執行に際し、連れ去った親がその場にいることが要件となっています。

強制執行を拒むケースを阻止

つまり、こうした要件を利用し、親が居留守などを使って執行を阻むケースがあったようです。改正案では、子供と同居する親がいなくても、親権者が立ち会うことで、引き渡しを実行できる規定を盛り込んでいます。一方で子の心情に配慮し、原則として親権者の立ち会いを義務付けました。

また、現行法に子供を引き渡す際の規定が明文化されていないことにも対処しています。これまでは、動産の引き渡し規定を準用していましたが、改正案には裁判所の決定を経て強制的に引き渡すことができると明記しています。

国際結婚が離婚…子供の連れ去りに対応したハーグ条約

ハーグ条約

また同様の問題は国際結婚にもあるようです。海外での結婚生活が破綻し、離婚するなどした親が、日本に子供を連れ帰るケースがあり、国際問題になっています。

このため、政府は、国境をまたいだ夫婦間の子供の引き渡し手続きを定めたハーグ条約実施法改正案にも、連れ帰った親本人がいなくても、裁判所の執行官が子供を連れ出せるようにすることなどを盛り込んでいます。

ハーグ条約は、国境を越えた子供の不法な連れ去りや留置(一方の親の同意を得て一時帰国した後、約束の期限を過ぎても子供を元の居住国に戻さないこと)をめぐる紛争に対応するための国際的な枠組み。

子供を元の居住国に返還するための手続きや国境を越えた親子の面会交流の実現のための締約国間の協力などについて定めた条約です。

日本では2014年に発効

ハーグ条約は1983年に発効し、98カ国が加盟しています。日本は長く未加盟でしたが国際結婚が増えて状況が変わりました。国際結婚した日本人女性が離婚後、海外から無断で子供を連れて帰国する事態が増えたことなどに対応し、日本も2014年にハーグ条約を発効しました。

ハーグ条約では、連れ去りがあると当事国の当局間で話し合います。解決しなければ次は子供が連れていかれた国の裁判所の判断になります。欧米からは、子供の返還命令が出ても、執行に時間がかかるという問題点を指摘しています。

実際に子供が連れ去られた場合の対策とは

子供の引き渡し

結婚生活や、離婚を巡る話し合い途中、離婚後などに、実際に子供の連れ去りが起こった場合にはどうすればよいのでしょうか。まず、家庭裁判所では「子の引き渡し調停」や「子の引き渡し審判」という手続きができます。

子供の引き渡し調停は、相手と話し合うことによって、子どもの引き渡しを求めるやり方です。ただ、相手がどうしても納得しない場合には、調停は不成立となります。その後は、手続きが審判に移行して、裁判所が子供の引き渡しを認めるかどうかを判断します。

違法性が高い連れ去りとは

親権者ではない親が、親権を持った親にことわりもなく、勝手に子供を連れて行ってしまった場合は、違法性が高い連れ去りと言えます。

このほか、子どもの親権をめぐる協議の途中で子供を連れ去ったり、家に押しかけたり、通学の帰り道や、よく行く公園で待ち伏せして連れて行ってしまったり、子供を自分の家に連れて行って、そのまま帰さないなどの行動は「違法性が高い」と判断される可能性があります。

子供の引き渡しを拒否する相手にペナルティを課す「間接強制」

子供の親権が確定した後でも、親権を失った側の親が子供を引き渡さない場合、裁判所に強制執行を申し立てることができます。子供の引渡しの強制執行の方法は、大きく2種類あります。ひとつは、裁判官の執行官が現地に赴き、直接子供を引き取る直接強制ですが、もうひとつ「間接強制」という方法もあります。

間接強制は、司法判断に従わず、履行を拒む親に対し、間接強制金という制裁金の支払を命じる方法です。相手が命令に従うまでの間、相手の給料の一部を差し押さえるなど、財産の差押をすることができます。間接的にプレッシャーを与えることによって、相手に子どもの引き渡しを求めます。

まとめ

離婚、別居をきっかけに子供を連れ去れれたら

  • 強引に子どもの親権をとろうとするケースには、親権を認めないという考え方が強まっている
  • 家庭裁判所で「子の引き渡し調停」や「子の引き渡し審判」という手続きをする
  • 政府は子どもの引き渡しの新ルール策定へ
  • 新ルールは国際離婚の問題にも有効
  • 引き渡しに応じない相手には、ペナルティを課す「間接強制」を

離婚をめぐる条件交渉の中で、子供の親権が争いの種になることが増えているようです。日本は欧米のような「共同親権」ではなく、親権を失うと子供と会うことが難しくなるケースもあります。

そうしたことも背景に合って、親権者が離婚相手に子どもを連れ去られてしまうケースも起こっています。この場合、自分ひとりで対処するのは難しく、弁護士などの専門家に依頼するのが得策です。