離婚を切り出すときに、大きなストレスを感じる人は少なくありません。妻や夫の反応が読めず、逆ギレされたり、酷いことを言われる可能性もあるからです。どのように切り出せば、うまく進むのかはケース・バイ・ケースです。
自分の配偶者の性格を分析し、冷静に離婚へ向けた話し合いの場に加わってもらえるような切り出し方を選ぶことが大事です。手紙を書く場合も、文章表現に気を配る心構えが必要です。
面と向かって言うと感情的になる恐れ
「オレ様」系の夫や、プライドの高いヒステリー妻に対し、面と向かって離婚の意思を告げることが、難しいと感じることは自然なことです。ましてや、配偶者に高圧的な態度を取られ続けてきたことが、離婚の一因であるときしたら、面と向かうと、威圧感に負けて、言いたいことが言えなくなってしまう可能性もあります。
最近は、ブラック企業や、パワハラ上司がいる会社を退職したいとき、自分ではうまく切り出せなかったり、逆に脅されたりすることもあるようです。こうした場合に対応し、退職届を代わりに出してくれるサービスもあるようです。
ただ、離婚の場合は、退職の場合と違って、離婚した後も、子供の養育などについて、今後も離婚相手と関わっていかなければならないケースも少なくありません。離婚後のことも考えた上で、離婚したい気持ちと離婚後の協力関係について理解してもらうことが重要です。
そういうケースでは、手紙に自分の思いをしたためてみるのが効果的です。
「離婚して」気持ちを手紙で伝える方法
モラハラ夫と離婚したAさん
言うべきことを上手く伝えるには
元夫は会社では人の上に立つ立場です。だから、家でも指示されたり、注意されたりすることは嫌いでした。いつもは、私が、元夫の気持ちを察して、食事の支度などをしていました。でも、虫の居所が悪かったり、少しでも気に入らないことがあると、急に不機嫌になり、大きな音を立てて威嚇するような人でした。
残り物の大福に怒り爆発
そんなこんなで、娘も私も、元夫の顔色ばかりを窺う日々に疲れてきました。相手は、気分次第で感情を爆発させているからいいですが、こちらは、「今日は機嫌がいいかな」と思って油断していると、予想もしなかったことで、怒り始めるから大変です。
ある時、娘の友だちが遊びに来たために、御菓子を用意しました。アイスクリームをいくつか買ったのですが、ひとつもあまらずに友だちで食べつくしてしまいました。
娘の友だちが帰って1時間後に、元夫が仕事から帰ってきました。ゴミ箱にアイスの空箱を見つけて、自分の分もあると思い、冷凍庫を開けますが、アイスはありません。私が「アイスはクラスメートがみんな食べちゃって、大福ならあまっているわよ」というと、急に不機嫌モードになり、ドアが壊れんばかりの大きな音を立てて、部屋に引きこもってしまいました。
浮気の証拠を発見…離婚を決意
もう、疲れ切ってしまい、離婚を考え始めました。そんな時、入浴中の夫のスマートフォンのアプリに、女性からメールが入ってくるのを見てしまったのです。セキュリティーがかかっていなかったので、やり取りの履歴をみると、かなり深い間柄でした。
そのやり取りを自分のスマホの写真で撮影しました。浮気の証拠です。私の気持ちは、離婚へとぐっと傾いていきました。
話し合いはとても無理、手紙を書くことに
離婚を決意し、不貞行為の証拠も手にしたけど、離婚を切り出すのはかなり高いハードルでした。というのも、大福の例を出すまでもなく、私の方から離婚を切り出すことは、相手はとても驚くだろうし、動揺すると、どのような反応を示すかわからなかったからです。
恐らく、大きな音を立てて威嚇し、話し合いに応じずに部屋に閉じこもってしまう可能性は高いと考えられました。
これまで、威嚇されることにずっと怯えてきたので、その時になっても、勇気を持って面と向かえるか自身がありません。もし、勇気を出して面と向かったとしても、暴力を振るわれる可能性を否定できません。
いろいろ考えて、手紙を書くことにしました。以下が書いた手紙の内容です。元夫は比較的冷静に離婚しかないという事態を受け入れたようでした。
手紙の文例:離婚の意思と自分の要望を伝える
〇〇夫さんへ
女性と不貞行為を続けていることを知り、頭の中が真っ白になりました。これまで、子供のために、夫婦関係がうまくいくように努力してきたつもりですが、もう限界です。夫婦で話し合って決めるべきことでしょうが、それができる精神状態ではありません。手紙で素直な気持ちをお伝えします。
子供にも、私の気持ちを話しました。子供なりに、夫婦が上手くいっていないことを気付いているようでした。このままの状態で家族を続けることは、子供としても辛いということでした。
私たちの夫婦関係は終わりますが、子供の親であることは変わりません。私たちの離婚によって、子供の将来に良くない影響を与えることは本意ではありません。夢に向かって頑張っている子供が、その夢を叶えられるように、経済的なお力添えをお願いします。
△△△より
相手に何を求めるのかを意識した文面
離婚の意思が強いことを伝える
離婚を告げるために書かれたこの手紙では、第一段落で離婚の意思が固いことを伝えています。離婚を決意せざるを得なかった理由として、相手の不貞行為を挙げていますが、この時、相手を責めることに主眼を置くのは得策ではありません。
もし、相手に反省を促し、もう一度やり直したいのであれば、自分が精神的にダメージを受けた責任を追及するのも手です。しかし、もう離婚の意思が硬いのであれば、相手には、「離婚しか道がないこと」を納得してもらうように話の流れを持っていくべきです。
挑発につながる文面はあえて抑える
また、この手紙では、これまでの元夫の威圧的な行為にも触れていません。精神的なダメージを与える元夫の数々の行為は、必要があれば、慰謝料や親権の交渉で揉めた場合に持ち出すと効果的です。
離婚をするかしないかを問う段階では、相手の感情をむやみに逆なでしないほうがスムーズに行く可能性は高いと考えられます。もちろん、相手に反省してもらいたい気持ちが強いことは自然なことです。
しかし、もともと、オレ様的な性格の人は、他人から指摘されることを嫌います。まずは、離婚しか道がないことを納得してもらうことを考えたほうがスムーズに行く可能性が高いと考えられます。
子供への経済的な支援を呼びかける
最後に、自分たち夫婦が離婚してしまうけれども、子供の親であることは動かしがたい事実であり、責任を持って、子供の成長に力を貸してもらいたい気持ちを伝えることが大事です。
相手の不貞行為が離婚の原因であることは事実ですが、必要以上に、それを責め立てると、相手の気分を害してしまいます。悔しい気持ちが収まらないというのも自然でしょうが、ここは子供のことを考えて、できるだけ力を貸してもらうように持っていきます。
まとめ
支配的な夫や、キレやすい夫に疲れてしまって、離婚を決意した場合は、それを言い出すのに大きなストレスを感じることは避けられません。できれば、離婚を決意してからなるべく早い段階で、弁護士などの第三者に相談する道を考えたほうが得策です。
家庭という密室ですべてを解決しようとすると、腕力が強く、独善的な性格を持っている人が、思いのままにしてしまう恐れがあります。
できるだけ、離婚へ向けた話し合いの場を、第三者を交えた環境に持っていくことを意識します。
離婚を切り出すときの方法や、手紙を書く時の文面なども、第三者に相談に乗ってもらうと、相手の気持ちを逆なでするリスクも小さくなることが期待できます。